比べることで何に気づく?子どもの発見と探究を深める比較の方法

比べることで気づきが生まれる

「こっちの葉っぱの方が細いよ」
「同じように描いたのに、こっちの方が色が濃く見える」
「昨日より芽が伸びている!」

子どもが身の回りのものを見たり、作ったり、試したりしていると、こうした小さな発見が生まれることがあります。

そのきっかけの一つになるのが、「比べる」ことです。

一つだけを見ていると当たり前に感じることでも、二つのものを並べたり、前の状態と見比べたりすると、違いや共通点、変化が見えてくることがあります。

すると、次のような疑問が浮かぶこともあります。

「どうして違うんだろう?」
「ほかの場合も同じかな?」

このような疑問が生まれると、もう一度観察したり、条件を変えて試したり、図鑑や本で調べたりする行動につながります。

文部科学省の『小学校学習指導要領解説(理科編)』でも、第3学年では、自然の事物・現象を比較し、違いや共通点を基に問題を見いだすことが重視されています。
つまり、比較は、答えを見つけるためだけではなく、新しい問いを見つける入口にもなるのです。

この記事では、比べることで子どもが何に気づくのか、また、その気づきを発見や探究につなげる方法を紹介します。

目次

比べると、それまで見えなかったことに気づける

葉を見比べていて、それまで見えなかったことに気づける

一つだけ見ていると「当たり前」に見える

例えば、道端で1枚の葉を拾ったとします。

その葉だけを見ていると、気づけることは限られるかもしれません。

「緑色の葉っぱだね」

という程度で、観察が終わることもあります。

そこで、形の違う葉をもう1枚、横に置いてみます。

すると、

「こっちの方が細い」
「先が尖っている」
「葉っぱの線の入り方が違う」
「でも、どちらも真ん中に太い線がある」

など、それまで気づかなかった特徴が見えてきます。

比べる対象があると、「どこを見るか」という視点を持ちやすくなります。

文部科学省も、小学校理科における「比較」を、自然の事物・現象の違いや共通点を明らかにするための方法として位置づけています。

「同じところ」を探すことも比較

「比べてみよう」と言われると、多くの場合、「違うところ」を探したくなります。
しかし、比較で見つかるのは違いだけではありません。

例えば、大きさも色も違う二つの木の実を比べて、

「どちらにも硬い殻がある」

と気づくことも比較です。

お兄ちゃんと弟が、木の実や石を二つ並べて見ている

反対に、ほとんど同じように見える二つのものから、

「よく見ると、ここだけ違う」

と発見することもあります。

つまり比較とは、

「どちらが良いか」を決めるのではなく、それぞれの特徴を見つけること

だと考えると分かりやすいでしょう。

比べることで気づけることは一つではない

比べる対象や比べ方を変えると、見えてくるものも変わります。

比べることは、大きく分けて、「違い」「共通点」「変化」「傾向」などに気づくきっかけになります。

「違い」に気づく

最も分かりやすい比較です。

例えば二つの石を並べると、

  • 大きさ
  • 形
  • 色
  • 重さ
  • 表面の手触り

などの違いに気づくことがあります。

最初は、「なんとなく違う」と感じるだけでも構いません。

そこから、

「何が違うのかな?」

と一つずつ見ていくことで、気づきが具体的になっていきます。

「共通点」に気づく

一見まったく違うものでも、比べてみると共通点が見つかることがあります。

例えば、クレヨンと色鉛筆は、見た目も使い方も異なります。

しかし、

「どちらも色を重ねられる」
「力の入れ方で見え方が変わる」

といった共通点を見つけることができます。

「違うところはどこ?」だけでなく、

「同じところはあるかな?」

と問いかけてみると、別の見方が生まれます。

「変化」に気づく

比べる対象は、別の物である必要はありません。

同じものの「前」と「後」を比べることもできます。

例えば植物を育てているなら、

  • 1日目
  • 3日目
  • 1週間後

それぞれの時期に写真を撮って残しておくと、変化を比べやすくなります。

「葉が増えた」
「茎が長くなった」
「葉の向きが変わった」

など、その場では気づかなかった変化が見えてくることがあります。

工作でも同じです。

最初に作ったものと、工夫した後のものを並べてみると、

「ここを大きくした」
「前より倒れにくくなった」

と、自分が試したことと結果を振り返りやすくなります。

変化や傾向に気づく

「傾向」にも気づける

何度か同じように比べていると、

「こうすると、こうなりやすいのかな?」

こうした傾向に気づくこともあります。

紙で作った橋に少しずつ重りを載せ、橋の強さを比べていると、

「折り方を変えると、載せられる重さも変わるみたいだ」

と気づくかもしれません。

ただし、1回の結果だけを見て、

「必ずこうなる」

と決めることはできません。

そこで、

「もう一度やったらどうなるかな?」

と確かめることが、次の探究につながります。

「何が違う?」から「なぜ違う?」へ進む

比較によって違いや変化を見つけたら、そこで終わりではありません。

むしろ、そこから探究が始まります。

2種類の紙に同じ鉛筆で描いた線を見比べている

気づきから疑問が生まれる

例えば、同じ鉛筆で2種類の紙に線を引いたとき、子どもが「こっちの紙の方が濃く見える」と気づいたとします。

そこで「本当だね」と受け止めるだけでなく、「どうして違って見えるんだろう?」と一緒に考えてみます。

すると、「紙がざらざらしているからかな」「書くときの力が違ったのかな」と、新しい疑問や予想が生まれるかもしれません。

このように、「違いに気づき、なぜだろうと考え、さらに確かめてみる」という流れは、探究の大切な入口になります。

学校での学びでも、こうした考え方は重視されています。
小学校理科では、自然の事物や現象に親しみ、そこから問題を見つけます。
そのうえで、予想や仮説を立てて観察や実験を行い、結果を整理して考えるという問題解決の過程が大切にされています。

子どもが日常生活で行う「比べる」ことも、こうした学びにつながる小さな一歩といえます。

気づいたことから予想してみる

予想は、正解を当てるためだけにするものではありません。

「どうしてだと思う?」

と聞かれたときに、これまでの経験や、今見えていることをもとに考えてみることに意味があります。

例えば、「ざらざらした紙だから濃くなったのかもしれない」と考えたとします。

その予想を確かめるために、「では、別のざらざらした紙でも試してみよう」と、次の行動につなげられます。

気づいたことをもとに、次に何を確かめるか考えることが、比較を探究につなげる大切なポイントです。

確かめるために、もう一度比べてみる

条件をそろえると違いを確かめやすい

自由に比べるだけでも、たくさんの発見があります。

しかし、

「どうしてこの違いが生まれたのだろう?」

と原因を確かめたくなったら、少しずつ条件にも目を向けてみましょう。

2BとHBの鉛筆を同じ条件で試している

例えば、2BとHBの鉛筆の違いを確かめたい場合、

  • 同じ紙を使う
  • できるだけ同じくらいの力で書く
  • 同じ長さの線を書く

など、鉛筆以外の条件をなるべくそろえます。

条件がいくつも違ってしまうと、違いの原因が鉛筆にあるのか、紙にあるのか分かりにくくなるからです。

小学校理科でも、高学年になると、調べたい要因以外の条件をそろえて観察や実験を行う「条件を制御する」という考え方を学びます。

ただし、小さな子どもに最初から厳密な実験を求める必要はありません。

まずは、

「違う!」と気づくこと。

そして、「どうして?」という疑問が生まれたときに、少しずつ条件を考えていけば十分です。

一度の結果だけで決めず、もう一度確かめる

一度試した結果が、次も同じになるとは限りません。

そこで、

「もう一回やってみよう」

と、繰り返してみます。

すると、

「やっぱり同じだった」
「今度は違った」
「さっきとは別のところに気づいた」

といった、新しい発見が生まれます。

文部科学省の『幼稚園教育要領解説』でも、幼児が身近な物と関わり、自分なりに比べたり、繰り返し試したりしながら、物の特性を探っていくことが大切だと示されています。

比べることは、一度で答えを出すためだけのものではありません。

「比べる」→「気づく」→「考える」→「もう一度比べる」→「新しいことに気づく」という繰り返しが、探究を少しずつ深めていきます。

記録すると、気づかなかった変化が見えてくる

植物の写真やメモから観察記録をまとめている

写真や絵を並べて比べる

その場では分かりにくかった変化も、記録しておくと、後から気づくことがあります。

例えば、朝顔を毎日見ていても、

「毎日少しずつ大きくなっている」

という変化には気づきにくいかもしれません。

そこで、同じような位置から写真を撮り、並べてみます。

すると、

「3日前はここまでしかなかった」
「葉っぱが2枚増えている」

など、変化を比べやすくなります。

写真だけでなく、

  • 絵
  • 日付
  • 長さ
  • 数
  • 気づいたこと

などを記録する方法もあります。

表にすると、複数の違いを整理できる

いくつかのものを比べる場合は、簡単な表にしてみるのも一つの方法です。

例えば画材を比べるなら、次のようにします。

画材色の見え方線の太さ描いたときに気づいたこと
色鉛筆
クレヨン
水性マーカー

※空欄に気づいたことを記入してください

ここで大切なのは、大人が先に答えを決めないことです。

「クレヨンはこう」
「色鉛筆はこう」

と決めつけるのではなく、実際に子どもが使って、

「こう感じた」
「こんな違いを見つけた」

と思ったことを記録していきます。

同じ道具でも、使う紙や力の入れ方によって、結果が変わることがあります。

その違い自体も、新しい発見になります。

身近なものを比べるだけでも発見は生まれる

鉛筆・画材・紙や段ボール・葉や石を比べている

特別な実験道具を用意しなくても、日常の中で比べることができます。

鉛筆を比べる

2B・B・HBなど、濃さの違う鉛筆を同じ紙に書いてみます。

例えば、

  • 線の濃さ
  • 線の太さ
  • 書いたときの感触
  • 消しゴムで消した後

などを比べます。

最初から鉛筆の特徴を教えるのではなく、

「何か違うところはある?」

と子ども自身に探してもらうと、気づきが生まれやすくなります。

画材を比べる

同じ丸や線を、

  • 色鉛筆
  • クレヨン
  • 水性マーカー

で描いてみます。

すると、

「クレヨンは線が太くなった」
「色鉛筆は重ねて描ける」
「マーカーは紙の裏まで色が見えた」

など、実際に使ったからこそ分かる違いが見つかることがあります。

ここでも、「どれが一番良いか」を決める必要はありません。

それぞれにどんな特徴があるのかを見つけることが目的です。

工作の材料を比べる

同じ大きさに切った、

  • コピー用紙
  • 厚紙
  • 段ボール

を曲げたり立てたりしてみるのもよいでしょう。

「これは簡単に曲がる」
「段ボールには厚みがある」
「同じ紙でもまったく違う」

といった気づきが生まれます。

そこから、

「じゃあ、橋を作るならどれを使おう?」

と考え、工作にもつながります。

比較して得た気づきが、材料を選ぶ理由になるわけです。

身近な自然を比べる

公園や道端にある、

  • 葉
  • 石
  • 木の実

なども比較できます。

例えば、葉を集めて並べ、

「一番細いのはどれ?」
「似ている葉はある?」
「全部に共通しているところは?」

と見ていきます。

普段なら「葉っぱ」と一括りにしていたものの中にも、それぞれ異なる特徴があることに気づくかもしれません。

大人の声かけで「気づき」はさらに広がる

「どっちが良い?」より「何が違う?」

子どもが何かを比べていると、

「どっちが上手にできた?」

と聞きたくなることがあります。

しかし、発見を広げたいときは、評価するよりも観察を促す問いかけの方が適しています。

例えば、

「どこが違う?」
「同じところはある?」
「前と比べて何か変わった?」
「ほかに気づいたことはある?」

と聞いてみましょう。

紙飛行機を飛ばしたあとに見比べている

すると、

「こっちが良い」

という一つの答えにとどまらず、いくつもの特徴に目を向けやすくなります。

「どうしてだと思う?」で次の探究へつなげる

子どもが、

「こっちの方が遠くまで飛んだ!」

と気づいたとします。

そのとき、

「すごいね」

だけで終わらせず、

「どうしてこっちの方が飛んだと思う?」

と聞いてみましょう。

「軽いからかな」
「羽の形が違うからかな」

と考え始めたら、

「どうしたら確かめられるかな?」

と続けることもできます。

大人がすぐに答えを教えなくても、子ども自身の気づきを手がかりに、次の問いが生まれることがあります。

子ども同士を比べて優劣をつけることとは、別のものとして考える必要があります

ここまで紹介してきた「比較」とは、

物や現象、結果などを見比べ、特徴や変化を見つけること

です。

兄弟や友達の作品を並べて、

「どちらが上手か」
「どの作品が上手にできているか」

と優劣を決めることとは、目的が異なります。

作品を比べる場合でも、

「どちらが上手?」

ではなく、

「使っている色はどう違う?」
「作り方で違うところはある?」

と見ていけば、それぞれの工夫に気づくことができます。

比べることを、誰かを評価するためではなく、新しいことを発見するために使うことが大切です。

まとめ|小さな「違う」が次の発見につながる

何かを比べると、

「違う」
「同じ」
「前と変わった」

という小さな気づきが生まれます。

そして、その気づきを少し掘り下げると、

「どうして違うの?」
「ほかも同じかな?」
「もう一度やったらどうなる?」

という新しい疑問につながります。

家族で観察や比較をしている

流れを整理すると、次のようになります。

比べる
↓
違いや共通点、変化に気づく
↓
「なぜ?」が生まれる
↓
予想する
↓
もう一度試す
↓
新しいことに気づく

文部科学省の幼稚園教育要領では、身近な物に関わりながら、「比べる」「関連付ける」「考える」「試す」といった活動が示されています。

一方、小学校理科では、違いや共通点から問題を見いだし、予想を立てて観察や実験を行う問題解決の過程が重視されています。

比較は、特別な実験のときだけに使うものではありません。

文房具、工作、植物、石、日々の変化など、身の回りには比べられるものがたくさんあります。

子どもが、

「何か違う!」

と気づいたとき、すぐに答えを教えるのではなく、

「どこが違うんだろう?」

と子どもと一緒に考えてみましょう。

その小さな気づきが、次の「なぜ?」を生むきっかけになるかもしれません。

参考資料

文部科学省「幼稚園教育要領(平成29年3月告示)」では、身近な物や遊具に関わり、自分なりに比べたり、関連付けたりしながら考え、試すことが示されています。
文部科学省「幼稚園教育要領」

文部科学省「幼稚園教育要領解説」では、身近な物を比べたり、繰り返し試したりしながら、その特性を探っていく過程について解説されています。
文部科学省「幼稚園教育要領解説」

文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編」では、第3学年の「比較」、第4学年の「関係付け」、第5学年の「条件を制御する」、第6学年の「多面的に考える」など、問題解決の力を段階的に育成する考え方が示されています。
文部科学省「小学校学習指導要領解説 理科編」

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